先日、早稲田大学商学部で開講されている「起業家養成講座Ⅰ」に、博水の5代目予定である江越雄大がゲスト講師として登壇しました。
この講座は、日本M&Aセンターによる寄附講座として開講されており、学生のアントレプレナーシップを育むことを目的に、起業や経営、事業承継、新規事業づくりについて学ぶ授業です。
現役経営者や専門家の方々が講師を務め、実際の経営の現場から、意思決定やリーダーシップについて学ぶ貴重な機会となっています。
当日の詳細な様子は日本M&Aセンター様のこちらの記事でご覧いただけます。
アトツギ甲子園受賞者として登壇
今回の第5回授業では、中小企業庁主催のピッチコンテスト「アトツギ甲子園」をテーマに、第5回・第6回アトツギ甲子園の受賞者3名が登壇しました。
博水からは、第5回アトツギ甲子園で「地方創生賞」を受賞した5代目が登壇し、約300名の学生の皆さんに向けて、家業と向き合う中で感じてきたことや、博水のこれからの挑戦についてお話ししました。
何者でもなかった。だからこそ、動き続けた
講義では、博水の取り組みだけでなく、私自身のこれまでの歩みについてもお話ししました。
立命館大学を卒業後、すぐに家業に入ったわけではありません。Web制作のインターン、フリーター、フィリピン留学、バックパッカー、印刷会社での勤務など、さまざまな経験を経て、25歳で家業である博水に入社しました。
学生時代から将来やりたいことが明確にあったわけではありませんでした。 授業に十分に向き合えなかった時期や、夏休みに家にこもってゲームばかりしていた時期、意気込んで受講した資格試験に落ちてしまった経験もあります。
振り返ると、決して順風満帆な学生時代ではありませんでした。 自分に自信が持てず、何者にもなれていないような感覚を抱えながら、それでもどこかで「現状を変えたい」という思いがありました。
だからこそ、少しでも興味を持ったことには飛び込んでみようと、無計画旅、留学、富士山登山、フルマラソン、パブのアルバイト、アプリのプロモーションボランティア、京都学生祭典のスタッフなど、さまざまな経験を重ねていきました。
当日投影した資料の中では、当時の自分自身をこのような言葉で表現しました。
何者でもなかった。
自信もなかった。
だからこそ、
好奇心に従い動き続けた。
講義後の学生の皆さんの感想でも、この言葉に触れてくださる声が多くありました。
完璧な計画があったわけではありません。明確な夢や目標があったわけでもありません。それでも、興味を持ったことに一歩踏み出し、正解のない中でも面白さを見つけながら動き続けてきたことが、今の仕事や家業との向き合い方につながっています。
遠回りに見える経験も、振り返ってみると、現在の仕事の土台になっています。
博水の歴史と、練り物業界のこれから
講義では、博水の歴史や練り物業界の現状、そして「伝統をどう未来につなげていくか」というテーマについてもお伝えしました。
博水は、福岡で創業して120年以上、魚肉練り製品をつくり続けてきた会社です。
さつま揚げや蒲鉾、ギョロッケなど、昔ながらの練り物を大切にしながら、近年ではグルテンフリーの魚麺「HAKATA BOKOMEN!」や、魚の未利用部位を活用した魚醤など、時代に合わせた新しい商品開発にも取り組んでいます。
伝統を守ることは、昔のままでいることだけではない
講義の中で特にお伝えしたかったのは、「伝統を守ることは、昔のままでいることだけではない」ということです。
練り物は、日本の食文化の中で長く親しまれてきた食品です。一方で、食生活の変化や若い世代の魚離れにより、業界全体としては大きな転換期を迎えています。
しかし、視点を変えると、練り物にはまだまだ大きな可能性があります。魚由来のたんぱく質を手軽に摂れること、脂質が比較的低いこと、グルテンフリーの商品展開ができること。これらは、健康志向やボディメイク、海外市場といった現代のニーズともつながります。
昔から受け継いできた技術や食文化を、今の時代にどう届けるか。その問いに向き合い続けることこそが、私たちにとっての「伝統を守る」ということだと考えています。
主体性を持って、家業と向き合う
家業に戻った当初は、日々の業務をこなすことに精一杯で、仕事の面白さを十分に見いだせていませんでした。
しかし、コロナ禍で売上が落ち込み、「このままでは会社が続かないかもしれない」という危機感を持ったことをきっかけに、自分が動かなければ何も変わらないと強く感じるようになりました。
会社には社員がいて、その生活もあります。地域の取引先やお客様もいます。そうした責任を感じる中で、少しずつ経営者としての意識が芽生えていきました。
学生の皆さんからいただいた感想
講義後には、学生の皆さんから多くの感想をいただきました。
伝統産業でも、見方を変えれば新しい可能性があると感じた。
練り物がグルテンフリーや高たんぱく食品として活用できることに驚いた。
地方の老舗企業が海外にも挑戦していることが印象に残った。
失敗や遠回りも、今の仕事につながっているという話に勇気をもらった。
このような感想を読み、私自身も改めて多くの気づきをいただきました。
当たり前の中にある、博水らしさ
日々会社にいると、自分たちにとって当たり前になっていることがあります。
福岡近海で水揚げされた魚を使うこと。鮮魚からすり身をつくること。石臼で丁寧に練り上げること。魚の未利用部位を活かして魚醤をつくること。地域の食文化を次の世代につなげようとすること。
しかし、外から見ると、それらは価値ある取り組みであり、未来につながる可能性でもあるのだと、学生の皆さんの言葉から気づかされました。
練り物文化を、未来へ
今回の登壇は、博水にとっても、自社の歴史とこれからを見つめ直す貴重な機会となりました。
これからも博水は、福岡の地で培ってきた練り物づくりの技術を大切にしながら、健康、環境、海外展開、食育など、さまざまな切り口から新しい価値を生み出していきます。
そして、練り物を「昔ながらの食べ物」としてだけではなく、これからの時代にも必要とされる食として、多くの方に届けてまいります。
早稲田大学の学生の皆さま、日本M&Aセンターの皆さま、このたびは貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。


