創業100年超の私たちが、あえて「非効率」な魚の自社加工を続ける理由
#コラム

創業100年超の私たちが、あえて「非効率」な魚の自社加工を続ける理由

福岡・博多で創業100年以上。
私たち株式会社博水は、今も昔も変わらず「魚からすり身をつくる」ことにこだわり続けています。

皆さんは、普段食べているかまぼこてんぷら(さつま揚げ)が、どのように作られているかご存知でしょうか?
実は練り物業界の中で、博水は少し特殊な存在です。

今回は、私たちがあえて「非効率」に見える魚の自社加工を続ける理由と、そこから広がるSDGs・フードロス削減への取り組みについてご紹介します。


業界の常識に逆らう?「魚から作る」ということ

現在、練り物業界の8〜9割は海外産の冷凍すり身を使用すると言われています。
冷凍すり身は価格が安定し、扱いやすく、生産効率も高いため、現代では主流の原料です。

しかし博水は、創業当時(1903年)から受け継ぐ技術を守り、今もエソなどの魚を自社で仕入れ、捌き、すり身に加工しています。

冷凍すり身を使う場合と比べ、その手間は5〜6倍
さらに天候によって仕入れが左右されることもあり、決して効率的とは言えません。

博水のすり身づくりの様子
職人が魚を見極め、一尾ずつ丁寧に加工しています。

ではなぜ、博水は効率化の流れとは反対の道を選び続けるのか。 その答えは、とてもシンプルです。

「地元の魚を使い、本当に美味しいものを作りたい」
「品質を自分たちの目で確かめ、誠実な食品を届けたい」

魚の状態を見て、触れて、確かめながらつくる。 それができるのは魚を自社で捌く博水だからこそであり、その技術は練り物の味へと直結します。


職人の技術が「未利用魚」を救う

かつては「手間がかかる」と言われた自社加工の技術が、今ではSDGs・地域資源循環の要として大きな役割を果たし始めています。

■ 未利用魚(みりようぎょ)とは?

大きすぎる、小さすぎる、骨が硬い、価値がつかないなどの理由で、市場に出回らず廃棄されてしまう魚のことです。

多くの練り物メーカーは完成した「すり身」を仕入れて加工するため、未利用魚を扱える設備がありません。

しかし博水には、魚を一から捌けるラインと、それを扱う職人の技術があります。 これが、未利用魚をおいしい食品へ生まれ変わらせる大きな強みです。

■ 事例①:コノシロを「つみれ」へ

寿司ネタとして知られる「コハダ」が成長した魚「コノシロ」。 大きくなると価値が下がり、漁港で大量に水揚げされても廃棄のリスクがあります。

博水はこのコノシロをつみれに加工し、学校給食へ提供。 子どもたちに「地元の海と魚を知る食育」の機会も生まれました。

■ 事例②:ブリのアラを「ブリギョロッケ」へ

ブリの頭や骨の周りには、まだたっぷりの身が残っています。 福岡市内の水産加工会社と協力し、アラをミンチにして「ブリギョロッケ」として学校給食へ。

未利用魚を活用したブリギョロッケ
捨てられるはずだった魚が、子どもたちの給食へ。

これらの取り組みは、単なるリサイクルではありません。
・地元の魚の価値を高める
・子どもたちの食育につながる
・地域・漁業・加工業の新しい連携を生む

博水の技術は「海の資源を守るための手段」にもなっているのです。


伝統を守ることが、未来の練り物文化をつくる

最近では、宮崎大学発のスタートアップ企業と連携し、 養殖サクラマスの採卵後の親魚をすり身へ加工するプロジェクトも始まっています。

プロジェクトの詳細についてはこちらで紹介しています:
▶ 宮崎大学発スタートアップと連携した「養殖サクラマス未利用資源活用プロジェクト」

採卵後の親魚は、産卵にエネルギーを使うことで身の脂質含量が少なくなるため、食用としての価値が低いとされ、その多くが活用されていませんでしたが、博水の加工技術により、食品として新たに命を吹き込むことができます。

輸入すり身の価格高騰が続く今、 「国産未利用魚を活用したすり身」は、地域水産業の未来を支える大きな可能性を持っています。

博水の工場の様子
伝統は過去ではなく、未来をつくるための技術。

創業100年以上続く技術は、決して時代遅れではありません。 それは持続可能な未来をつくるための技術でもあるのです。

これからも博水は、
魚を無駄なく活かす技術
地域資源を守る姿勢
子どもたちへつなぐ食文化
を大切にしながら、練り物の可能性を広げていきます。

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